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心理課主催 第3回認知行動療法ワークショップ開催報告

2016.03.14

心理課主催 第3回認知行動療法ワークショップ開催報告

去る1月31日(日)に、長岡病院心理課主催の第3回認知行動療法ワークショップを開催しました。今回のテーマは「認知再構成法のコツ」です。最も認知療法らしい技法であるといえる認知再構成法を取り上げ、徹底的に練習していただく機会としました。今回も定員を大幅に超える申し込みがあり、当日は定員いっぱいの50名を超える方にご参加いただきました。

 

認知再構成法の目的、対象、方法

午前中は認知再構成法について、目的、対象、方法に分けて解説し、知識の整理を行いました。しばしば、認知再構成法は(認知療法も)、誤解されています。「認知再構成の目的は認知を変えることであり、その対象は間違った認知である、そして指示的な方法で行うのだ」という誤解です。

本当は、認知を変えること自体が目的なのではありません。目的は、過剰な不快感情の適正化であり、マイナスの感情を和らげることにあるのです。そのための手段として、認知に介入するわけです。

その介入のターゲット(対象)となる認知は、必ずしも間違った認知というわけではありません。現実の一部しか反映していないような偏った認知に対して介入するのが普通です。また、認知といってもいろいろあり、自己効力期待や結果期待、原因帰属といった概念も、ターゲットとなる認知を確定する際に参考になります。このあたりのことも解説しました。

相手の認知を変える際に、「こう考えればいいのですよ」という形で指示することは、ほとんどありません。患者さま自らが、自分の認知の偏りに気づき、自分が楽になる認知を見つけていく、これが理想です。このように自分で自分の認知を変えていくために、『5コラム』といったようなフォーマットが用意されています。また、セラピスト側が『ソクラテスの質問法』という独特の問いかけを行うことによって、患者さまの気づきを促していきます。こういったことが、認知再構成法の方法なのです。

 

集団認知行動療法の実演

午後にはまず、当院のストレスケア病棟で実施している集団認知行動療法のデモンストレーションを行いました。当院の山出健博臨床心理士による実演で、参加者の数名に患者さま役をやっていただきました。患者さま役の一人が強い不安を感じた場面をうまくコラムに落とし込んでいき、他の方から非常にたくさんの適応的思考を引き出すことができました。そのなかには、ご本人が非常に納得できるものがあったようで、不安の感情が大きく低減しました。このような実演を観察学習するという形式は、今後の研修会でも採用していく予定です。

 

ソクラテスの質問法

最後に、相手の気づきを促すソクラテスの質問法の練習をしていただきました。古代ギリシャのソクラテスが、相手に質問を投げかけることによって、相手が真理を生み出すのを手伝ったように、認知再構成法においては、相手に質問を投げかけることによって、相手が適応的な思考を生み出すお手伝いをするわけです。筆者は、自らの臨床経験やさまざまな心理療法の学びを踏まえて、ソクラテスの質問法を6つに整理しています。たとえば、事実と認知がごっちゃになっている場合には、それらを分けるために根拠を質問する、過度の一般化をしている場合には、それを崩すために例外を質問する、などです。これらは非常に汎用性が高いと考えられますので、基本技として身につけておけば、いろいろな場面で活用できるはずです。そのことを、今回の研修ではロールプレイで実感していただけたようです。

 

アンケート結果など

今回の研修後のアンケートでは、過去最高の評価をいただきました。全般的な評価では、5点満点で平均4.6であり、そのほか、面白さや理解しやすさ、活用度に関しても4.5を超える評価でした。今後とも、参加してよかったと思っていただける研修会になるように心がけたいと思います。

次回は5月22日(日)に、CBTセンターの西川公平先生をお招きして、開催する予定です。テーマは「模擬面接とロールプレイで学ぶ認知行動療法」となる見込みです。認知行動療法を学びたい専門家の方々には、ぜひともご参加いただければと考えております。

 

 

文:若井貴史(医療社会事業部 心理課係長 臨床心理士)

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