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第6回CBTワークショップ開催報告

2016.12.19

第6回CBTワークショップ開催報告

9月25日に当院カンファレンスルームにて、第6回認知行動療法ワークショップを開催しました。今回のテーマは「基礎心理学の活かし方」で、筆者と小山秀之先生(わかやま心理教育サポートセンター)が講師を務めました。

信頼関係の作り方

最初に筆者が、認知行動療法の概要を説明し、認知行動療法では前提とされている“ラポール(信頼関係)”形成の方法について、筆者なりの工夫を紹介しました。筆者が実践しているのは、相手の言語表現・非言語表現にそれとなく合わせるペーシングという技法です。こうすると患者さまは、「セラピストは自分と似ている」と感じ、安心できます。これがラポール形成につながるのです。基礎心理学においても、類似が関係性の深まりに影響しているということを示す研究が多くあります。逆に、言葉づかいや話すテンポ、表情や姿勢などが自分と全然違う人に対しては、違和感をもつのではないでしょうか。そうすると、ラポールを構築することは難しくなります。

セラピストの側も、相手の表現をまねることによって、相手の認識を追体験しやすくなります。「嬉しいから笑うのではなく、笑うから嬉しい」と唱える“ジェームズ=ランゲ説”という古典的な知見がありますが、こちらの表情を相手に一致させると、相手が体験している感情を自然と体験できるものです。以上のような話をしました。

統計の知識

その後は小山先生にお任せしました。統計や社会心理学・認知心理学の膨大な知見をもとにした、とても密度の濃い、豊富な内容でした。統計については、難解なので内容には触れませんが、要因計画法や因子分析などを理解していないと、認知行動療法の介入の効果をしっかりと確認したり、測定尺度(質問紙)の意味をきちんと理解したりできないのだということがよく分かりました。未知のケースに対応したり、面接で行き詰ったりしたときには、専門的な論文を読んでヒントを得る必要がありますが、そういった論文を読む際にも統計の知識は必須ですので、しっかり学び直したいと感じました。

社会心理学・認知心理学の知見

社会心理学の知見は関係性作りに活かせると、小山先生は説明されていました。これは筆者の話と通じるものでした。人間には「自己開示の返報性」があるため、相手に心を開いてほしいと思ったら、まず自分のことを開示すればいいということでした。そうすれば、お礼として、相手も自己開示してくれるというわけです。

他にも、相手の動機づけや理解力がどれくらいかに応じて、態度変容に至るルートが異なるという研究が紹介されました。このような知見は、心理教育を行う際に活用できるとのことでした。さらに、解決を先送りする対処法が意外と効果的であることを示す研究や、認知の変化では感情のコントロールを10%程度しか説明できないとする研究、筆記によって感情抑制による負荷が低減したり、認知の再体制化が促進されたりするという研究など、非常に多くの役立つ知見が紹介されました。参加者の皆さんには、臨床上活かせるヒントが満載だったのではないかと思います。

次回の予定

次回は、11月13日(日)に、東豊先生をお招きして家族療法に関わるワークショップを行います。非常に著名で、名人と評価される先生だけに、われわれも楽しみにしております。ご関心のある専門職の方々は、ぜひともご参加ください。

 

文責:若井貴史(医療社会事業部 心理課係長 臨床心理士)

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