お知らせ

「就労支援のSST」 研修報告

2015.02.14

就労支援のSST

平成26年11月23 日(日)に、SST普及協会近畿支部と一般財団法人長岡記念財団の共催で、中級研修「就労支援のSST」を開催しました。午前中は吉田悦規先生(宝塚三田病院SST認定講師)と政広平先生(ヒューマンライツ福祉協会)によるワークショップ「就労支援で生かすSST」、午後からは山崎亨先生(大東コーポレートサービス株式会社顧問)による講演「企業における就労支援~SSTを取り入れた職場支援~」でした。

就労支援で生かすSST

約20 名の参加者があった午前中のワークショップでは、吉田先生によるデモンストレーションが多く、非常に印象的でした。たとえば、仕事量を実際の荷物を持つことで喩えたり、おもちゃのお札を使ったりして、発達障害を持つ対象者ばかりではなく、すべての人にイメージしやすくする工夫をされていました。また、リワーク施設でのウォーミングアップのデモンストレーションでは、うつの方のマイナス思考を軽減するために、ある物のいいところを尋ねてプラスの言葉が出るような介入を行っておられました。このようなSSTの実際を見て学べる点がワークショップのいい点だとあらためて感じました。

アセスメントについても、非常に勉強になりました。吉田先生は就労支援ではアセスメントが命だと力説され、アセスメントとそれに基づく介入法を図でわかりやすく説明されました。社会的なルールや考え方を知らない場合は、それをしっかり伝えたり、観察学習を促したりします。ルールを知っていても、対処行動を知らない場合は、ベラック式で対応します。対処行動を知っていても使えない場合は、基本訓練モデルでスキルの使い方を身に付ける、ということでした。

また、アセスメントということでいうと、吉田先生はワークショップの最初に、参加者が何を学びたいのかというそれぞれのニードを丁寧に聞いておられました。参加者のニードをアセスメントして、それに合わせた研修を行っておられたのだと思います。われわれもこのようなアセスメントに基づいて適切なSSTが実施できるように、今後とも更なる研鑽を積んでいきたいと思いました。

企業における就労支援

午後の講演には、約50 名の参加者がありました。山崎先生は冒頭、「障害者はいかなる企業でも雇用できる」と力強く断言されていました。実際、障害者雇用を目的とした特例子会社である大東コーポレートサービスでは、500種類以上の仕事ができるようになり、その中には名刺づくりのような、1億円以上の収益を上げる業務も含まれているということでした。業務の難易度に応じて、誰でもできる仕事、スキルが必要な仕事、ベテランができる仕事という3 段階を設定しておられるのも、単純ですが効果的な工夫だと感じました。

山崎先生は、小学1、2 年のテストでも20〜30点ほどしか取れない、スキルの低い社員を相手にSSTを導入して、社員を育てていった苦労の歴史をお話になりました。山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」という名言に触れて、SSTの一番重要な点として、褒めて伸ばすということを強調されていました。また、「できないのをできるようにするのが指導者の仕事」「できるまで、20 回でも30 回でも教える」という言葉には、強烈な責任感がこもっていました。

職場で行うSSTは、すぐに現場で活用できるし、ホームワークも設定しやすいと語られていました。また、SSTの最後に振り返りの時間があるのは、他者の感想を聞くことによって、自分とは違った別の見方が確認できるので、非常に効果的だということでした。

山崎先生は、SSTはこのように非常に実践的で有効な手法だが、教える側の力量もいると強調され、研修に参加し続けて5 年ほどたってようやく、健常者も交えたグループSSTができるようになった、というエピソードを披露されました。われわれも、患者さまのQOLを高めることが自分たちの仕事であることを肝に銘じて、責任感をもってしっかりと研鑽していく決意です。

 

(文責:医療社会事業部 心理課係長 若井 貴史)

※上記文章は財団誌「ティータイム」2015年1月号の内容を編集して掲載しています。

▲PAGE TOP