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CBTコラム③

2016.01.26

不安に対する認知行動療法

今回は、不安に対する認知行動療法(CBT)の概略を説明します。

そもそも不安とは?

まず、そもそも不安とはどのような感情なのでしょうか。それは、未来において何か自分にとってよくないことや危険なことが起こるのではないかと考えるときに生じる感情です。不安を感じると、人は危険を避けるためにさまざまな対処法をとります。そうすることによって、危険な目に会う確率が下がるのですから、不安とは本来、適応的なものだといってもいいのです。

しかし、強すぎる不安は不快で自分自身を苦しめるだけになってしまいます。不安の強さを表す方程式というものがあります。それは、「不安=危険の評価÷対処能力の評価」という式です。すなわち、危険を過大評価すればするほど、あるいは自分には対処力がないと評価すればするほど、不安の度合いは高まるわけです。

不安に対する2つの対処法

したがって、過度の不安を下げるためには、過剰に危険視している評価を下げる(適正化する)ことが必要になります。あるいは、対処力をつけて、対処能力の評価を上げることも役に立ちます。

前者は主に認知(ものの捉え方や考え方)への介入となります。本当に予想しているほど危険なのかを、データを収集して確かめていくのです。データに基づいて調べていった結果、当初思っていたほど危険ではないと分かれば、不安は下がります。

後者は主に行動への介入となります。たとえばスピーチ不安の場合は、スピーチの練習をくり返すことによって、スキルアップし、対処能力の評価が上がるわけです。そうすると、不安は軽減されます。 このように、認知や行動に働きかけて、不安の方程式の分子(危険の評価)を低めて分母(対処能力の評価)を高めるのがCBTの基本的な戦略です。

不安障害に対するCBT

日常生活でしばしば起こる強い不安だけでなく、不安障害のために仕事や生活に支障が出るレベルで持続している病的な不安に対しても、CBTはかなり有効だということが分かっています。不安障害には、パニック障害・社交不安障害・強迫性障害などがありますが、それぞれに応じた介入方法が開発されています。それらに共通するのは、不安を喚起させる状況にあえて直面し、そのまま何もしないという「曝露」という技法が使われることです。

不安であるために回避していた状況にあえて立ち向かうのですから、それなりの手続きが必要です。CBTの面接では、なぜ曝露が有効なのかをしっかりと納得していただいたうえで、どのようなスモールステップを設定するかを相談しながら進めていきます。また、曝露の効果を台なしにしてしまう行動もありますので、それについても話し合います。

不安はCBTの得意分野

不安障害に対するCBTはかなりの治療効果が認められています。CBTを受けたい、詳しく聞きたいという方は、当院心理課までお問い合わせください。

 

文責:若井 貴史 (臨床心理士)

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