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第9回CBTワークショップ開催報告

2017.09.21

第9回CBTワークショップ開催報告

5月28日に当院にて、第9回認知行動療法ワークショップを開催した。今回のテーマは「エクスポージャーと儀式妨害」で、岡嶋美代先生(なごやメンタルクリニック他)と筆者が講師を務め、約50名の参加があった。

事例による技法の説明

エクスポージャーと儀式妨害は、強迫性障害に対する認知行動療法の典型的な技法で、苦手なものにさらされることによって不快感情を高め続け、それを下げる行為をしないでおくというものである。そこで午前中は、筆者が経験した事例を紹介しながら、この技法の説明を行った。ここで強調したのは、ゾワゾワやソワソワといった身体感覚を高め、その身体感覚を、あるがままに観察する(マインドフルネスに眺める)ことの大切さである。
途中、岡嶋先生が何度かコメントをくださった。たとえば、「不安は高まっても、放っておいたらいつかは下がる」と説明してしまうと、不安を下げることが目標になってしまいかねないので、やめたほうがいい、ということであった。また、岡嶋先生は不安階層表については否定派だということだった。なぜなら、不安の高いものから低いものまでを並べて、チャレンジできそうなところから順に取り組んでいくというのは、強迫性を助長してしまう可能性があるからだ、ということであった。

こだわりに共感する

午後は、岡嶋先生による講義だったが、すぐにでも臨床に活かせそうなヒントが満載であった。岡嶋先生が初めに強調されたのは、「こだわりに共感する」ということである。非常に些細なこだわりであっても、「気にしなくていいよ」などといってしまうと、それは本人の価値観を否定したことになり、かえってそのこだわりを増強してしまう結果になる、ということであった。そうならないために、まずはこだわりに共感する姿勢が大切だということであった。

マインドフルネス儀式妨害

岡嶋先生が命名された「マインドフルネス儀式妨害」という方法も、目からうろこが落ちた思いであった。浮かんできた心配事を考えないようにしようとすると、かえってそのことに注目してしまい、いつまでも考え続けることになる。そこで、湧いてきた心配事は、心の中心に変らないものとして置いておくのがいい、ということであった。つまり、否定するのではなく、肯定して受け流すのである。そのうえで、五感を駆使して、注意を「今、ここ」の対象に向け、自分の気づきで頭の中を満たしていく、これがマインドフルネス儀式妨害だということであった。筆者も普段の臨床で行っていることだが、それが明確に整理できた思いである。この研修での学びを日々の臨床に活かしていきたい。

次回以降の予定

次回は、7月30日(日)に「マインドフルネスを体験しよう」(講師:若井貴史)というテーマで行う。その次は、8月27日(日)に「事例検討とロールプレイ③」(講師:若井貴史、山出健博)を開催する。ご関心のある専門職の方は、ぜひともご参加いただきたい。

 

文責:若井貴史(医療社会事業部 心理課係長 臨床心理士)

第9回CBTワークショップ 岡嶋美代先生
                 岡嶋美代先生

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