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第13回CBTワークショップ開催報告

2018.08.28

第13回CBTワークショップ開催報告

医療社会事業部 心理係長 臨床心理士 若井貴史

9月24日当院にて、第13回認知行動療法(CBT)ワークショップを開催した。今回のテーマは「働く人へのCBT」であり、馬ノ段梨乃先生(京都産業メンタルヘルスセンター)と筆者が講師を務めた。約50名の参加があった。

心理検査の応用

初めに、筆者がCBTの基本を紹介した後、簡易な心理検査であるTEGをCBTに活用する方法を解説した。TEGは、人間の心を5つに分けて、それぞれの高低を見る検査である。特にストレスをためやすいのは、「自由な子ども」の得点が低いケースである。この場合、喜びや達成感を感じられる活動を探し試していく「行動活性化」という技法を使うとよい。また、「父性」の得点が高い場合は、自他に対する理想や要求が高く、「~するべき」という思考が強い可能性が高い。こういった方に対しては、「認知再構成法」によって「べき思考」を緩めていくと、本人も周囲も楽になることが多い。「適応的な子ども」の得点が高く、過剰適応ぎみの方に対しては、上手な自己主張の仕方を訓練する「アサーション・トレーニング」が効果的である。このような解説をして、TEGのようなツールを使うことの意義を説明した。

ライフライン(人生曲線)の分析

その後、馬ノ段先生から職場のメンタルヘルス全般について講義があり、ワークを交えながら、復職支援や予防領域におけるCBTの活用についてお話があった。充実した資料を用いた密度の濃い研修であった。そのなかで、印象に残ったのは、まず、ライフラインの分析である。これは、横軸に年齢をとり、縦軸は幸福度を-100~100点で示すものである。これまでの人生の浮き沈みが曲線で表される。馬ノ段先生は、「調子が悪かった時の対処もセットで伺い、相手の対処法をアセスメントするのだ」とおっしゃった。これはCBT的に、相手の認知や行動のパターンを把握するうえでも有効な方法だと感じた。

活動記録表の活用

もう一つ印象に残ったのは、活動記録表の工夫である。馬ノ段先生が使われている活動記録表には、疲労度や気分、それに行動目標や1週間の振り返りを書く欄が設けてあった。これ一つで多くの情報を集約でき、いろいろな形でリワークや職場定着に活用できる。われわれも、相手に合わせて活動記録表をアレンジしていく必要があるとあらためて感じた。また、活動記録表の書き方から、その方の認知的・行動的特性をアセスメントするという話を伺い、これも非常に参考になった。他にも、企業で研修をする際はどのような研修名をつけるかも大切であること、上司や社内スタッフに当事者の状態を伝えるときにCBTの用語はわかりやすくて活用しやすいことなども教えていただいた。働く人を支援していくうえで有益な研修会であったと感じている。

次回以降の予定

次回は、11月26日(日)に「マインドフルネス」(講師:小山秀之先生、若井貴史)、その次は、12月17日(日)に「動機づけ面接の基本」(講師:岡嶋美代先生)を開催する。関心のある専門職の方は、ぜひともご参加いただきたい。

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